どうぶつにまつわるエピソードを聞かせてください ミロコマチコより

どうぶつにまつわるエピソードを聞かせてください ミロコマチコより

うさぎのはなし:12話

01|
おはなし:菅野勲さん(山形県大蔵村肘折 60代)
聞き書き:鈴木淑子

ウサギを捕まえる話というと、面白い体験したわけよ。鷹とウサギの兼ね合いで、自分が置いてったウサギを鷹が押さえたり。みんなに話してもよ、「よくそんなの見たこと!」と言われるんだけど。
 ウサギ狩りでたまたま逃げられて、ウサギが川の方に逃げて行った。ゆるい傾斜地から急に、崖があんのよ。下の方は川なんだ。どこさいった?と崖から眺めてみたら、誰かの上着よ、木さかかってあって。木さ、上着かけたみたいに見えるわけ。あれ、誰か上着なんかかけてんなぁ、でも誰も来たことないんだけどなぁ。人来た跡無くて、なんで上着があそこさあるんだ、変だなーと思って。崖だから、そっからまっすぐ降りていけなくて、回って降りていよいよ近づいていったらよ、その上着が飛んで行ったのよ。上着だと思ったのが、それが鷹だったのよ。鷹が、だらーんと羽下げて、弱った格好して、木の上さ居たのよ。そしたらその下さ、ウサギが入ったのよ。鷹が、ちょうど上着かけた感じに俺から見えたわけ。そいつのウサギ、手づかみで捕まえたわけ。撃たないで。そういうこともあったということ。

うさぎのはなし(12話)

02|「うさぎおいし」
おはなし:大河内辰治さん(宮城県丸森町 80代)
聞き書き:庄司亮一

食べ物が少なかった時代、冬になると、よく裏山でウサギを捕った。この辺(宮城県南)も昔は年の暮れ頃になると雪が積もる日が何日かあって、雪の中に足跡を探して罠を仕掛けて捕るんだが、足跡がないとわからないから、雪が降った日にしか捕らなかった。
俺は罠のかけ方の名人だった。ウサギはおんなじ道を通るので、通り道に罠をかけておくと翌朝にはかかっている。ただ、ウサギも賢いから、こっちも知恵を働かせてうまく仕掛けないと簡単にはかからない。その辺はなんて言ったらいいのか、まあ経験と勘だな。
罠に使うのは針金一本。太さは14番線がいい。ウサギが通った足跡を見つけたら、まず、その近くに生えている細い木の先をつかまえてグッとしならせて曲げ、枝先を適当なところで切る。切った先を土の中に突き刺し、そこに小枝を支えに巻きつけて外れない程度に止め、人が何とかくぐれるぐらいの大きさのアーチを作る。
木のアーチの真ん中に、針金を20~30cmぐらいの輪にしてつける。その時、針金の端の片方を木にくくり付け、もう片方の端は木にくくった針金に3回ほど巻き付けて輪にする。枝にくくりつけた方の針金を引っ張ると、輪が締め付けられるように縮む仕組みだ。輪は地面から5cmぐらい浮かせておく。
その輪の中をウサギが通る。すると、ひっかかった衝撃で地面に刺していた木の先端が外れ、木が「バイーン」と勢いよく跳ね戻る。針金の輪がウサギの重みと木の跳ね返り作用で締め付けられ、ウサギは首根っこの所でつるし上げられる。
ウサギが丁度跳ねたところでひっかかるような具合にするのが難しい。俺はまず外したことはなかったがな。
捕ったうさぎは、自分でさばいて食った。剥いだ毛皮は耳あてなどにした。昔はウサギを専門に売り買いをする人もいたが、俺は自分ところで食う分だけ捕った。山ウサギは大きくて、臭みもなく、とてもうまかった。油でいためたり、正月の雑煮に入れることもあった。
特にカレーに入れて食うのが一番うまかったな~。

03|「兎のはなし」
おはなし:斉藤栄輝さん(山形県大蔵村肘折 20代)
聞き書き:宮本武典

ここいらは冬場になれば、兎はよく見かけるよ。小学校のときかな、仲間と神社の裏に秘密基地をつくって遊んでいたんだけど、雪の降りはじめにそのすぐ近くで、ウサギの足跡を見つけたんだ。
雪の上に点々とついた足跡をおっかけると、ところどころに糞がおちてる。それがまだ温かくて湿っていたから、これは近くにいるぞと。
それでみんなで、兎を追跡したんだよ。裏山に雪が降りはじめて、白くなった山の斜面を息を切らしてはっていくと、足跡は頂上の、太い樹の根元のところで途切れていた。根元に穴があったんだ。ここにいるぞ、さあどうしようかって。
豆腐屋のケンジが、家から鯉をすくう網をもってきた。そいつで穴の出口を塞いで、樹の反対側からドカドカ蹴ったり、騒いだりして、ウサギを穴から追い出そうとしたんだけど、いくらやってもでてこない。
そのころにはもう、山は薄暗くなっていて、夜になるとさすがに親に怒られるので、兎はあきらめてみんなで山を降りたんだ。
がっかりしたって? いや、俺たちの秘密基地の最後の、雪が降る前に、山のなかで一日駆け回って「面白かったな、遊んだな」って充実感の方が強かったかな。ちょっとした冒険だよね。
いまでも兎の足跡をみると、子供時代のことを思い出すね。

04|
菅野勲さん(山形県大蔵村肘折 60代)
聞き書き:鈴木淑子

ウサギ捕まえておもしろいなぁと思ったのは、私の方さ、鉄砲持ってるところにまっすぐ走ってきたんだ。なんでウサギ走ってきた? と思った。そしてウサギ、撃ったのよ。そしたらその後に、テンが追っかけてきた。テンも撃とうと思ったら、ぐるっと回って逃げていったよ。びっくりしたもん。あの、ウサギは人間は怖くないのよ。銃を持ってるから怖いのであって。普通、テンとか、鷹とか、天敵は怖いから。だから人間ば、てーって逃げてきた。そういうこともあったってこと。
 冬の、雪の上でのことだ。ウサギ撃っていい猟期は冬しかないから。

05|
おはなし:男性(山形県中山町 70代)
聞き書き:高橋美香

親戚に猟師がいて、よくうさぎを捕まえて食べていた。冬の間、その親戚の家に行くと、家の梁にたくさんのうさぎの肉が干してあって、ごはん時になるとひょいとそれをつかんで鍋に放っていたのが忘れられない。

06|
おはなし:山形県大蔵村肘折 菅野勲さん
聞き書き:鈴木淑子

ウサギ狩りには、一人で行ったり、二人で行ったり。昔は大勢で、何人も勢子(せこ)連れて行った。まき狩りって言うんだ。昔は、銃持ってる人もいっぱいいたし。勢子も山好きでやる人はいっぱいいたけど。今は、山さ行く人はいないから、狩りはほとんど一人だ。
ウサギは日中、寝てんだ。夜行性だから。夜活動して、昼間寝てるから、その寝てるところを見つけて、そこまで銃の射程距離ば近づけたらこっちの勝ちよ。それが、ウサギに先に勘付かれて逃げられれば、あとはバイバイよ。まず一回はな。その後で、逃げたウサギを追ってく時は、あるけんどよ。普通はそれまでが勝負だ。だから足跡を見て。あの足跡があればすぐ近くにウサギいるって、そういう足跡があるんだ。ウサギは寝る時、特異な足跡をつけるんだ。普通に飛んで遊んで歩いた跡と違う。寝るというか、休むのが近くなっと、自分の足跡を隠そうとするんだ。天敵から守るためにそうすんだよ。狐とか狸とか、そういう天敵から守るために、隠そうとする。足跡を一回こう、まっすぐ行って、戻るのよ。一回戻って、ぽーんとこう、今までの幅の三倍くらいの幅で、ぽーんと飛ぶのよ。飛んでまた、それ一回ですぐ、ちょこちょこっとそのそばさ寝てる時もあれば、またもう一回やったりもする。何回もその行動を繰り返して、だいたいその行動の足跡を見れば、ああ近くさいるっていうこと。だいたいそれを頼りにして行くわけよ。それでも勘付かれて先に逃げられっ時は、そん時はあとはこっちの負けで。ウサギ逃げたら跳ねる間に撃ったり、跳ね歩いても、射程距離の間に撃ったりもあっけど。そこまでが勝負で。

07|
おはなし:菅野勲さん(山形県大蔵村肘折 60代)
聞き書き:鈴木淑子

猟は自分の親もやってたから、一緒に何回か歩いて覚えた。俺も中学校の時から、ウサギ狩りの勢子やってたからな。今はほとんど狩猟者は少なくなって、若い人も入ってこない。ウサギは増えすぎてはない。今、有害になるほどは、いない。前はウサギは1シーズンで、最高70くらい、捕まえたかな。1人でずーっと入って。年中、20を目標にしたけど20いかなかった。1人で午前中に7つ捕まえて、昼間から入って2つ捕まえたこともある。
獲ったウサギは全部いただく。好きな人にみんなわけて。皮だけ剥いてくれてやれば、あとで酒一升持ってくるんだ。ウサギを捕まえてきて剥いた時、胃だけとって、もったいないから、ぺろっと飲んで。精力剤になるんだ。そういうのも山の人たち、俺の先輩方には普通だった。俺より下の人たちはそんなことしないよ。それに料理に入れても苦いから、捨てねばなんないわけ。
 ウサギの皮は、今は捨てるだけだ。昔はいっぱい売れたけど、今は買うっていうとこもないし。
 昔は、ウサギは叩いて、煮て、ウサギ汁にしたな。骨ごとひき肉にして、青豆を入れて増やして団子にして。青豆って、枝豆、大豆のことだ。ウサギの肉は、あんまり匂いはしない。俺がちっちゃい時は、肉は肉でとって、骨だけでも叩いて食べてたな。今は、ただ切って煮るだけだ。味つけは好き好きだな。醤油とか味噌。大根、ごぼうは必ず入る。好きな人はウサギだけで食べたいって言う人もいる。その方がウサギの味がするって。大根入れれば、大根にウサギの味取られるけど、その大根が美味しいんだ。
 「まんさくウサギ」って言って、ウサギは春のまんさくの花が咲く頃が一番美味しいっていう。キジは、「霜降りキジ」。キジとかヤマドリは、雪の降る前の霜の降りる頃が一番美味しい。カモは「寒カモ」って。寒い時期のカモが一番美味しい。霜降りキジ、まんさくうさぎ、って昔の人は言うんだ。

08|
おはなし:樂さん(山形県新庄市 30代)

40歳すぎの知り合いから教えてもらった話です。
村の道でうさぎがひかれていたのを発見した隣のおじさんがうちのじぃさんの所に報告にきました。それを聞いたじぃさんは軽トラを走らせて現場に行きました。かすった程度でまだ息をしていたそうです。じぃさんはそのままごみ袋に入れ自宅へ持ち帰ってきました。何をするのかなぁとこっそり覗いてみたら、トゥルゥンと頭から足まで皮を剥いでいました。あまりにびっくりして慌てて布団をかぶって隠れました。ウトウト眠たくなってきた時に、「ペタン…。ぺターン…。」と何やら音が聞こえ気になって見に行ったら、じぃさんが剥いでいたそのうさぎでした。怖くて恐ろしくてまた布団をかぶって隠れました。そうしているうちに眠ってしまったようで気づいたら朝になっていました。いつものようにおっかぁ(お母さん)に手荒く布団をはがされ起こされました。目をこすりながら、すごく怖い夢だったと気づきました。いつものように準備し朝ご飯を食べそれから学校です。
「朝ごはんが唐揚げなんて豪華だね♪」とご機嫌に食べました。じぃさんもご機嫌に「うめぃべ!昨日のうさぎだ!」

09|
おはなし:菅野守さん(山形県山形市 70代)
聞き書き:髙橋かおる

昔は桜田山にもウサギがたくさんいたんだよ。ウサギはワラビ採りの前あたりだから、4月か5月頃に子っこ産むんだな。だから5月頃行くとよ、卵より一回りくらいの大きさの、こんなにちっちゃいのがいんの。大井沢の方に行って車停めたら。ちょこんちょこんって「あれ、ねずみ? んでもおかしいな」って。そしたらちょこんちょこんと田道を歩いてたっけのよ。そんで拾ってきたの。山ウサギを家内に持ってきたら「かわいい~」ってよぉ。ミルク飲ませて育てたらおっきくなったの。みんな飼ってるって話、聞いたことあるよ。そして夜になるとね「なんだべおかしな音するな」って、ゲージの中でよバターンバターンって足叩いてんの。ウサギは夜行性なんだよ。そして、うちの子供と家内の匂いは知ってけど、私が抱っこしたら嫌だと。匂い違うんだな。だからばーんとかかってくんだよ。そのままにしてると噛みついてくんだから。意外と狂暴なんだ。毒あんだもの。噛まれっと黄色くなってくる。まぁ毒はとんないかもしれないけど。噛まれっと傷出来んだ。
 ウサギは5年生きたね。そして首輪つけて散歩行くんだっけ。猫とか会うと抱かなきゃねえべ。そしたっけ逃げられたことあった。野生のウサギは足が速いんだけど、うちのは家の中で飼ってっから体力ねぇんだわ。10mくらい走ったらハァーハァー、ハァーハァー言うから手で掴めた。

10|「うんまいうさぎ狩り」
おはなし:伊藤房明さん(山形県山形市土坂 60代)
聞き書き:荒川由衣

うさぎは前はいっぱいいだっけげっと今はなんか少なくなってるみでだな。うさぎが歩くのは夜だけだから日中は見かけない。冬だと足跡つくがらうさぎいだなーって分がっけど、今だといるんだがいねんだがあんまり分がらね。タヌキとかキツネとかハクビシンとか、そういうのが今捕まえる人いねぐなってとにかく増えでっから、うさぎがちっこいうち食べられるんだがもすんねな。んだて、山で一番弱いべがら。前はよ、いっぱいいだどきは、うさぎのまき狩りどがやってだの。山の上の方さ鉄砲持った人が立ってで、下の方から勢子っていうのが「おぉー」っておっかげでいぐの。だど、ぽこぽこぽこって上さ逃げで行くの。そごを撃つんだ。上さ逃げる習性あっからよ。後ろ脚長くて前脚短いべ。んだげ、くだりは得意でないんだな。
うさぎの害も今はないけど昔はあったんだな。二十年も前の話だべげっと。杉の木とかを植林すっぺ、だど、そいづの芽食われるんだっけな。あと冬は木の皮とがな。カジカジカジって帯状にぐるーんとかじって食うがら木枯れでしまうんだべした。プルーンの木どがりゃ、雪深くなると枝の方へ届ぐがらほごんどごぎゃーっと食べる。冬は餌なぐなっぺ、んだと草とがなぐなっから木の皮どがそういうの食ってらんなねんだべした。前んだげ、営林署でも駆除するんだっけ。
猟期の最後に猟友会のみんなしてまき狩りやって、終わりにうさぎ汁して一杯やるんだ。11月15日から2月15日まで猟期だがらりゃ。猟期の最後んどきの日曜日にやるんだな。うんと美味しいど! 好きなんだま。うんまいよ、くせないがら。何の肉と似てるかってうさぎはうさぎの肉だな。独特。全然臭いどがなんかねぇがら。今は大山(芸工大近くの飲み屋さん)さ、ばらして持ってって鍋にしてもらってるんだ。ちゃんとばらして持ってきたらするよなんて言われながら。

11|
たけだのぞみさん(山形県上山市 30代)
聞き書き:荒川由衣

上山にあるスキー場で小さい子たちにスキーを教えるインストラクターをしていた時、毎日朝から夕方までの仕事を終えるとあたりはもう真っ暗だった。でも道路の両側は雪の壁がずっと続いていて、真っ暗だけど道は雪の白で明るかった。
ある日、車で走っていると、目の前に突然うさぎが見えた。車のライトで驚いたのか必死に逃げてる。逃げても逃げても雪の壁で逃げられなくて一生懸命壁の切れ目を探してるみたい。道はアイスバーンになっているから時折ツルッと足を滑らせながら走る姿が、うさぎは必死なんだけど、愛らしい。月明かりに照らされて、まるで自分がうさぎに導かれているような気持ちになった。道路わきに立っているポールのオレンジの光。人工物の中を野生のうさぎが走っていく様子が不思議だった。
「今日はいるかな」と動物のことを考えたりしながら走る雪道は怖くなかった。考えている時に限って出てきてはくれないけれど。

12|
おはなし:佐藤伴さん(宮城県大崎市古川 70代)
聞き書き:髙橋かおる

今でこそ道路ができたんだけどね。俺が子供の頃、住んでいた村には道がなかったんだよ。小学生の時、夏でも1時間半くらいかけて歩いて通っててさ。冬は特に大変。雪の日なんて月が出ている頃に家を出て、学校着くのが10時だからね。帰りは兄貴に馬ソリで迎えに来てもらってた。雪が積もった日の朝は一面が真っ白で。どこ歩いていいかわかんないの。ドボンと川に落ちちゃったりよくしてたよ。そのうちに気が付いたの。動物の足跡を辿ればいいんだって。特にウサギはね、わかりやすいの。どういうわけか足跡が5個あるんだよね。毎朝ウサギの足跡を探してさ。それを辿って通ってたっけなぁ。ウサギはめんこいけど逃げ足早いからね。家で飼ってたこともあるけど、山ウサギはどんなに囲っても穴掘って逃げちゃうの。

どうぶつにまつわるエピソードを聞かせてください ミロコマチコより