どうぶつにまつわるエピソードを聞かせてください ミロコマチコより

どうぶつにまつわるエピソードを聞かせてください ミロコマチコより

クマのはなし:17話

01|「ある日、森の中」
おはなし:志田藤夫さん(山形県小国町伊佐領 60代)
聞き書き:高橋美香

伊佐領は、小国町と飯豊町の山間にある小さな町。川の崖沿いに自宅を構えている。栗やかぼちゃを目当てに熊が降りてくるので、猟師の格好をしたかかしを作ったり、発砲スチロールを黒く塗った大きな熊なんかで威嚇をする風景をよく見る。熊はかかしだと悟って警戒しなくなるから、時々位置を変えたり工夫しなきゃいけない。向かいにある川を泳いでいくのもよく見た。泳ぎもとてもうまいものだ。
熊はとても賢い生き物だと、私たちは地域から、家族から聞かされて記憶していく。
森林調査の仕事をしていた2、3年前のお話。
森を分け入って歩いていると、15メートルくらい先に、ばったり熊の子と出くわした。
子熊は1メートルくらいの大きさで、木の根っこに前足をかけてこちらをじっ・・・と見ている。
子熊には母熊がつきもの。間違いなく近くにいる筈だ。子どもを守るための母熊は危険そのもの、警戒して周りを見渡すが、気配はしない。でも、こちらからは見えないだけで、熊からは人が見えている筈。とても緊張した。
普通、人間に気付けば、母熊が子熊に逃げろという合図を出すので、子熊が動いても良さそうなものだが、どういうわけか逃げない。やさしい目をしてじっとこちらを見ている。おかしな動きをしないよう、子熊の方から目をそらさないままゆっくり後ずさりをして、時間をかけてその場を離れた。
だいぶ距離をとった後も、子熊はしばらくこちらを見ていたのが印象的だった。あちらからは、こちらはどんな風に見えていたんだろうか。

クマのはなし:17話

02|
おはなし:菅野勲さん(山形県大蔵村肘折 60代)
聞き書き:鈴木淑子

クマは、大きさはだいたい1メートルから1メートル50くらいだな。これまで見たので一番大きいのって言ったら…ひとつだけ、親グマかな。あれは、ちょっと大きかったな。タケノコ採ってて、朝日台で大きいのが来たって騒いだんだ。あのクマが一番大きかった。山では、そんなに大きいクマには出くわさなかったな。明大グランドでさ、明大の人に頼まれて、周囲の草刈りしてんだ。毎年。明大グランドの周囲の結界の外れの方、草刈りに行ったれば、外れの方からガサガサっと歩いて来るんだ。そんなのいたって、ぜんぜん何にも。ただクマは車とか近づいてきたら、勘付いてざざざっと逃げて行く。車にぶつからなかったら、クマは絶対襲ってはこねぇ。逃げるだけだ。
 この辺さいるクマはなぜ怖くないのかというとな。今、話してるのはツキノワグマだけんど。奥山系統と、里型のクマって、自分ではそう思ってる。里方で、人が入ってるとこで、人が残した弁当とか食べて、その味を覚えてるクマは怖いわけだ。人のそばさ行って食べ物があると、わかってるクマは怖い。逆に人に寄ってくるクマもいるっていうくらいだから。この辺の山奥のクマは、人が行ったら逃げるだけで、絶対襲ってはこない。人を襲うクマと、逃げてるクマと。自分としては奥山のクマと、里型のクマって思ってる。自分がよく会うのは山奥のクマ。だから全然、怖いと思ったことはねぇもん。何回会っても。

03|
おはなし:男性(山形県中山町 70代)
聞き書き:高橋美香

ツキノワグマは見たことが無いが、アナグマは子供の頃よく見た。親戚が冬の間、猟小屋のようなものを作って一冬狩りをして過ごしていた。うさぎやアナグマがたくさんとれたときはよくお裾分けをもらって肉汁にして食べた。

04|
おはなし:菅野勲さん(山形県大蔵村肘折 60代)
聞き書き:鈴木淑子

クマと格闘技でもしたわけでねぇから、ただ見ただけの話でよ。山でクマなんて、10回は見てる。この春も見たもんな。肘折のまぁ、近くでな。クマで変わったことって言えば、クマが木さ登っていたっけなが、私が行ったもんだからさささっと降りてきた。あとはただ普通に、ちょこちょこ歩いてるだけだ。今年の春なんか、雪の上のなんでもねぇとこをよ、ただちょこちょこちょこっと歩いてきたのをよ、眺めてたれば。あら、何か歩いてくる、と思ったらクマだ!ってな。しばらく見てたよ。だいぶ…100、200メートルじゃきかないな。50メートルくらいか。あんまりおっきくはなかったから。喧嘩したって負けるようなクマではねぇ。クマは、勘付かねぇでただずーっと近づいて来るんだ。50メートル近くなってくるとよ、さすがに鉄砲でも持ってねぇから撃つわけにいかねぇ。「こらっ!」て声かけたわけよ。こら、じゃねぇな。なんて言ったっけな。「来い、来い」って言ったんだ。「来い、来い、来い、来い。」って言ったら、驚きもしないでちょっと見て、あと、すーっと山さ帰って行っただけだ。まっすぐ来なくて、引き返していった。その時は、山菜採りに山に行ったんだ。春の、コゴミとかウドとか出る時期だったな。コゴミ、採りに行った時だな。あとは、ゼンマイ採りに行った時も見たし。木さ登ってたのを見たのは、ちょうど今頃だな。キノコ採りで、マイタケ採りに行って見たな。あとは、雪の上では、銃持ってクマ出くわさなきゃなんだけど、鉄砲持っては一回も行ってねぇから。
 クマは、猟期中は冬眠してっから。春になって出たって騒いで、有害駆除の許可下りたって、たまたまいるわけでもないから。山奥さ入っていく猟はこの辺じゃやんないからな。クマは全然撃ったことはねぇ。撃ってみてぇ、撃ってみてぇって思ってはいるけど。

05|「寝ているクマ」
おはなし:菅野守さん(山形県山形市 70代)
聞き書き:髙橋かおる

クマには縄張りがあって、山から下りてきて悪さすんのは70キロくらいの小さなクマなんだ。12月23日から25日頃、大雪が降る前にね、どんどんどんどん山の奥に入っちゃうの。雁戸山とかの方にダァーと登っていく。でも、去年はね、いつもより早い11月17日に大雪が降ったの。すんごい雪でね。なんぼかき分けても登っていけなかったんだべな。帰られなくなったクマの親子がいたの。蔵王高校あたりで穴掘って寝てたよ。
そうそう、同じようなことが昭和40年くらいにもあったんだ。上山市の生居ってとこで、2月15日あたりにウサギまきしたの。山の下から勢子たちが「あーぁあーぁ」って大声出してウサギを追って、上で待っている猟師がドォーンと鉄砲で撃つんだ。その時、ウサギを追い上げてた勢子の一人が、かっぷとぬかったんだと。体温が高いから、そこだけ雪が溶けてたんだべな。ぬかった足元を見ると、なんとでっかいクマが寝ていたんだとよ。山に帰れなくなって、芝の中に穴掘ってペロンと入って寝ていたんだべ。狩猟期間中だったから、頭んとこズドォーンと撃たれたよ。寝てて近くで撃ったから、クマ用のおっきな玉使わなくても、ウサギ・カモ用の小さな三号弾で打ち抜けたんだと。近くで打てば頭ふっ飛ぶよ。

08|「親子熊」
おはなし:伊藤房明さん(山形県山形市 60代)
聞き書き:半澤青空

親子熊に会ったらすぐ逃げろって言うんだ、親子だど。子熊見つけだら、親熊が必ずいっからそばさ。んだ10年くらい前、一回有害駆除行って、檻さ子熊がかかってたんだっけ。子熊が檻さ入って。子熊だがら、放してやったら、すぐ脇さ親いだっけもの、うぉーって呼んでんだもん、子ば。親熊の姿は見えなかったげど、うぉーって脇で鳴いて呼んでるんだっけ。こだなちっこい熊逃がしてやらないとかわいそうだべ。放したらすぐ脇に親熊いだからな、びっくりしたっけ。んだけ、知らねで行ぐと熊に後ろからやられるんだべ。親熊が周りにいるか注意していがんなんねっけな、子熊入ってっときは必ずあいずだ、鉄砲とかたがってりゃ、一人ばりでんなぐよ何人かで警戒しながらいがねど。

09|「言い伝え」
おはなし:伊藤房明さん(山形県山形市 60代)
聞き書き:半澤青空

こご土坂には今、家が四十二戸が。若い人は少ないね。皆、若い人は下さりゃ、アパート借りたり家建てたりしてよ、ながながいねんだぁ。じゃ若い人がいねぐなると獣害とか駆除とかも大変なんだ。昔は十何人いだっけがら、こさ、鉄砲撃つ人。今俺一人。んだげ、辞めねでけろ辞めねでけろってりゃ。この辺出たらもう、俺が撃ちに出るしかないんだけんど、あどみんな、来っけっどや、あの猟友会の人がりゃ。熊の肉とか肝とか俺もあんまり食わんたっといいんだげっと、うん、俺あんまりもらってこねがらりゃ。誰が食いだいっていうどもらってくっけど。女の人が食べちゃいげないとかはないんねが。あど、熊の毛皮さ妊婦が座っと安産だどかってよく言って、熊の毛皮なめして(動物の生皮を薬品で処理して、耐久性・耐熱性・柔軟性をもたせる)とっておぐんだっけ。なんで安産だって言われるのが、わがんね。わがんねげっと言い伝え、昔からの、そういうのなんだっけな。熊の皮、座布団がわりに座ってっと、安産だって、この辺のな、言い伝えは。

10|「血だらけの学生」
伊藤房明さん(山形県山形市 60代)
聞き書き:半澤青空

熊は人の気配すると姿見せないがら。だいたいバタっと急に会わないど大丈夫なんだな。人がそこにいるんだーっていうとそこに姿見せないがら。人が気づく前に逃げていく。だから鈴とかラジオとか持って歩げーって言うべ。俺がまだ、学生の頃、中学1年か小学6年くらいのときだな、山形大学の先生と生徒が瀧山に登山してで熊からやらったって助け求めに来たっけ、顔から肩らへん血だらけになって。親子熊なんだっけど。そして隣の家のじいちゃんが昔兵隊で軍医だがしてきたっていって、そこで応急手当してすぐ救急車で行ったんだな。すごいっけもな、血だらけでよ。そのとき襲った親子熊の退治に行がねべな、わがんね、そんどぎは。

11|「けもののけはい」
おはなし:菊池大二郎さん(山形県山形市 40代)
聞き書き:高橋美香さん

子供の頃から野山で遊ぶのが好きで、学生の頃も山形の色んなところに釣りに行っていた。
上山もお気に入りの釣り場の一つ。渓流釣りをしに車で出かけた4月のある日、いつものように一人で釣り糸を垂れていると、対岸の方から「ばきばき」、と枝が軋む音がする。「なんの音だろう?」と思ったが特に気にしないでそのまま釣りを楽しんでいた。
ふと、何の気なしに辺りを見渡すと、残雪に何やら大きなくぼみが見えた。大人の手のひらを倍にしたような大きな足跡。
「こりゃクマだ・・・!」
渓流釣りなんてやっていると、『熊注意』なんてしょっちゅう看板が書いてある。
目にしてはいた。いたが、そうそう遭遇できるものとは予想だにしなかった。
考えてみれば、聞こえてくる「ばきばき」という音は熊が枝を踏みしめている足音ではないか。「ばきばき」。
そう思うと、一気に怖くなった。音はする、足跡もある、でも姿が見えない。圧倒的な気配だけをひしひしと感じて、声も上げずにあわあわと山を降りた。結局姿は見えなかったけれど、どこにいるのかわからない怖さがあった。

12|「クマの食事風景」
おはなし:伊藤房明さん(山形県山形市 60代)
聞き書き:荒川由衣

とうきびとか、かぼちゃ、あどスイカどが、栗などもだいぶ被害あるな。落ちてきた栗も食うげっとも、木さ登って、木を折だって、そごさ食べやすいように自分座る台作って、枝ば折だって棘ば剥いて器用に食べるんだな。鬼皮っていうが? 赤いとこりゃ、皮あっぺ、固いとこ、あそこぽろっと出すし。皮綺麗に剥くんだ。落ちてる皮見ると熊食ったなってわがる。イノシシとかあいづと食べ方違うんだな。皮をあんまりぐじゃぐじゃしないで、ぽろっと綺麗に出すんだ。カボチャはよ、あの中のりゃ、種あっとごあっぺ、綿っていうどご。あそごしか食わねがら。周りどが皮の、人食べる部分食べねの、中だけ。トウキビはぽろっともいで、皮綺麗に剥いてコリコリコリコリって人食べるみだい、人食べたみたいちゃんと芯だけ残して置いてあるんだ。

13|「スリルを味わう」
おはなし:奥山義則さん(山形県山形市 60代)
聞き書き:半澤青空

クマ捕まえに行くとき、動物の中で一番気を使うんだ。感づかれるから、音出してもタバコ吸ってもダメなんだ。だから、木化けとか石化けって言って、木や石の前に立って自分がそれになりきって見つからないようにしてる。それには気持ちが大事だね。クマと出会ってびっくりするっていうことは、あんまりないかなあ…クマおっかないって言ったって、俺はクマを捕まえに行く方だから。一緒に山に行く友達がクマに襲われて20針くらい縫ったことがあるんだよ。でも、それが逆にスリル…かな。小学校の頃の運動会で走る前にドキドキするのと同じ感覚するんだよ。で、鉄砲撃つ前からもう、クマが鍋に入ったような、まだ撃ってもないのに食べることを想像してるの。クマが目の前に出ると興奮して、すき焼きでも来たか!みたいな感じ。クマで出てきたからたまげるっていう感覚、俺はないんだ。狩猟する人はこういう感じだから、びっくりって感じではないかな。

14|
おはなし:佐藤和好さん(宮城県加美町 50代)
聞き書き:髙橋かおる

6月くらいだったかな。ダムの巡視で船に乗っていた時にね、仔グマが一匹、気持ちよさそうにダム湖を泳いでいたの。仔グマがいるってことは親グマも近くにいるのかな?そう思ってキョロキョロと探してみたんだけど、姿が見えなかったからちょっといたずらすることに。仔グマの周りを船でグルグル回ってみたの。そうすると洗濯機みたいに渦が出来るのね。その真ん中で仔グマがくぉっぷくぉっぷって浮いたり沈んだりして、顔を水面から出そうとジタバタしている姿が面白かったなぁ。でも野生のクマはたくましいからね。沈みかけたと思ったら泳いで岸に向かっていったよ。
 それからまた別の日に今度は大きなクマがダム湖にいたの。私は仔グマのことを思い出して、調子にのってまたクマの周りをグルグル船で回ってみたの。大きなクマが浮いたり沈んだりするところ見てみたかったからね。でもね、大きなクマはビクともしないの。それどころか私のことをじっと睨んで今にも襲いかかってきそうな顔してるんだもの。よだれなのかなんなのか、半開きの口元からツーッて水が出ているのが見えた。その顔見たらおっかなくなってね。びゅーんと船飛ばして逃げ帰ってきたよ。

15|
おはなし:氏家信子さん(大崎市岩出山 60代)
聞き書き:高橋かおる

うちの隣に住むばんつぁんが、カゴいっぱいにワラビ採ってきたんだよ。あ~ぁうちの田んぼに行ってきたんだなってすぐわかったんだけどね。うちの田んぼは山の入り口にあって、今は休耕してんだけど春先になるとワラビがいっぱい採れるんだ。みんなに「いいよいいよ」って言ってっから、近所の人たちが勝手に入って採るんだけども、やっぱり私だって採りたいべ。一人でカゴしょってワラビ採りに行ったの。
 田んぼのワラビはほとんどなくなっていたんだけど、山の方にはまだいっぱいあったのね。私は草をかき分けて夢中で採ってたの。しばらくしたら後ろからガサガサガサって音がして人の気配を感じた。「あら~隣のばんつぁん、また採りに来たんだっちゃ・・・」って思って「(ワラビ)ありすか?」って声かけたのね。そしたっけさっぱと返事ないんだおん。「なんだべ。耳遠くなったんだっちゃね・・・」って思って話かけるのをやめて、黙々と作業することに。カゴの中にはたくさんのワラビ。ずいぶん採ったしそろそろ帰っぺと思って、ばんつぁんに挨拶しようかと振り向いたらビックリ!クマがすぐ近くに立ってたのよ。ものすごく驚いてね。私、全然動けなくなってカマ握りしめたまま、大声あげて叫んだよ。今まで生きてきてあんなに大声出したことないってくらい大きな声で「ギャーギャー」騒いだら、クマもビックリしたんだべね。走って逃げて行ったよ。

16|
おはなし:男性(山形県天童市)
聞き書き:庄司亮一

棚田の周りに集落のおじいちゃんたちが色々な野菜を育ててる。かぼちゃとかスイカを。毎年イノシシと熊に食べられる。やられた~! とおじいちゃんがやってくる。育てていたものがクマやイノシシに、がぶっとやられている。次の日また、やられた~! とまたおじいちゃんの作物がイノシシや熊に食べられ、さらにサルが種を食べる。最後におじいちゃんが残ったのを食べる。
「食べるならきれいに食べやがれ!」とは言うけど笑っている。「俺も一個はいらないんだ」と言うから、怒ってるんだかなんだか……。
 森からの視点で考えると、サルはちょっとかじって捨てる。サルが上った樹の下にはたくさん実が落ちている。すると他の動物が食べられるんだ。
 米の穂がなり始めるとカメムシが来る春それを雀が食べる。雀頑張れ! だけど秋になると雀がお米を食べる。春はいいやつだけど秋はやなやつ! 春に良いことしてくれるから許してあげよう。

17|「有効活用」
おはなし:奥山義則さん(山形県山形市 60代)
聞き書き:玉手りか

狩猟を始めて40年になる。狩猟のグループでも後から入った者はパシリなのよ。先輩の言うことを聞かないといけない。若い頃はその中で動物のバラし方や料理も覚えた。そのうち母ちゃんよりも料理上手になった。俺らが入って何年かは、クマを絞めるとじいちゃんたちが、まだ生暖かいクマの血を湯飲み茶碗で汲んで、みんな飲ませるんだっけよ。今はそんなことしないけれど、昔はタンパク質のかわりだったんだね。血は血だよ、生臭くて飲めたもんじゃなかった。皮はなめして敷物に、胆汁はクマの胆(い)になった。クマは無駄にするところが無いね。
 クマの脂もすごい。冬に乾燥して手にあかぎれができても、クマを一頭ばらしているうちに治ってしまうの。うちの姉は、冬になるとしもやけがひどくて、紫色でパンパンに腫れていたんだけど、クマの脂をコーヒーのびんに入れて塗っていたら、もうしもやけにならなくなった。一匹捕まえるとバケツ一杯分くらいの脂が出るから、必要なひとは近所へもらいに行くの。それをフライパンでじゅうじゅう煮詰める。ただ、臭いんだ。昔は地域医療も無かったから、クマの脂や、クマの胆が重宝されていたね。クマの胆は金と同等の価値があった。胃が悪いときに飲むと結構すぐ治った。昔はドクダミや、イタドリの根っこを煎じて飲むとか、そういうものが薬代わりに頼りにされていたんだね。

どうぶつにまつわるエピソードを聞かせてください ミロコマチコより