どうぶつにまつわるエピソードを聞かせてください ミロコマチコより

どうぶつにまつわるエピソードを聞かせてください ミロコマチコより

とりたちのはなし:21話

01|「キツツキ小屋」
おはなし:菊池大二郎さん(山形県山形市 40代)
聞き書き:玉手りか

キツツキは山形ではよく見る鳥のひとつだ。カカカカ、カカカカと音を立てて木をつつくキツツキ。ちっちゃなコゲラ、アカゲラは白黒のまだら、グレーとグリーンが混ざったアオゲラ、クマゲラなんて大きなものもいる。見て楽しく、可愛らしい姿をしているが、ときに小屋に穴を空けてしまう害獣である一面もあり、別荘地ではけっこうな困り者だ。
僕がむかし持っていた大井沢の山小屋も、例外でなく被害を受けていた。いつのまにか壁には大小さまざまな穴が空き、二重になっているのにもかかわらず貫通していたところもあった。犯人はアオゲラ、ずんぐりむっくりした大きなキツツキで、大きなもので10センチ位もある穴も空けてしまう。
音を出して木をつつくのは、意図的で、求愛行動であるらしい。木の中の虫を食べるときは、ひっそりと木をほじくる、地味なものだ。音は出さない。求愛行動のために、キツツキは小屋を…。愛らしくもあり、迷惑していたその小屋を「キツツキ小屋」と名付けて呼んだ。

コウモリのはなし:11話

02|
おはなし:高内彩夏さん(東京都世田谷区 20代)

冬が近づくころ、山のカラスたちは車を待っている。
見晴らしの良い高い木にとまって
アスファルトを見下ろしながら、
坂道をのぼってくる車を待っている。
のぼってくる車たちは、のろのろとスピードが丁度いい。
今だ、というところで道路へ急降下し、
地面をかすめて舞い上がる。
ぱん、と音がして、
タイヤの過ぎた後には、皮の爆ぜたクルミが実を飛び散らかせている。
それをカラスたちはアワアワと鳴きながらうれしそうに拾って飲み込むのだ。
少しでもずれればうまくいかない。
まるでゲームを楽しんでいるようにもみえる、このあたりのカラスの流行りである。
大学は山のふもとにあり、
学生だったわたしは自転車でこの坂を登っていた。
坂は長く、傾斜は急で、つらいのだけれど
おりて引けば負けたような気もして、
息を切らしながら立ちこぎでのろのろ登っていた。
そのとき、目の前をさっと黒いものが通った。
車輪のまえに、カラのついた大きなくるみ!
あわててハンドルを切ってよろめく。くるみにつまづいて転ぶところだった。
「無理だよ。」と笑う。
自転車でも、くるみが割れると思ったのか。
停まってふりむけば、
うしろのほうで
と、と、とかけよって、くるみを確かめるカラス。
アー、と残念そうにないて、くわえて飛び去った。
そうしてまた、車を待っているのだ。
冬が近づく頃、道路にくるみが落ちていたら、
どうか避けないで轢いてやってほしい。

03「やまどりのおん」
おはなし:大河内悦子さん(宮城県丸森町 80代)
聞き書き:庄司亮一

昔は共同の炭焼き小屋というのがあって、冬から春にかけて持ち回りで炭焼きの番をしていました。
ある日、夫とふたりで番をしていた時のこと、たぶん春先だったと思います。炭焼き小屋の上空を大きな鷹が飛んでいました。しばらく眺めていると、どうやら鳥を追って飛んでいるようでした。すると突然、私たちのいる炭焼き小屋の前にバサバサッとその追われていた鳥が落ちてきたのです。
よく見ると尾の長い、茶色い羽根のヤマドリでした。ヤマドリは傷ついてはいなかったのですが、混乱した様子であたりを羽をばたつかせながら駆けずり回っておりました。上空に鷹が狙っているためか羽ばたいて飛び上がることが出来ないようです。
夫は私に「捕れホレ!」と駆り立て、近づいてきたヤマドリを捕えるよう命じました。私はあわててヤマドリの尾をつかまえましたが、ヤマドリは勢いよくはらいのけ、尾はするりと手からぬけてしまいました。すると前方に待ち構えていた夫がグッと腰を落としヤマドリを自分の股の間で囲むようにしてつかまえました。それでもヤマドリは勢いよくもがいていました。夫はヤマドリの足を両手でしっかりとつかみ上げたかと思うと、炭焼き小屋の脇に立っていた太い木の方へ向かいました。そしてためらうことなく、木の幹に鳥の頭の方を思いっきり3回ばかり打ち付けたのです。
ヤマドリはおとなしくなって、やがて息絶えました。
鷹に追われたヤマドリはもしかしたら私たち人間のいるところへ落ちれば助けられると思ったのかも知れません。私も少しは可哀そうだなと思いましたが、食べ物が少ない時代、ヤマドリはめったにあずかれない御馳走でした。
そのヤマドリは鳥飯にして食べました。
助けたヤマドリが恩返しにくるような話が出来たらよかったのですが…。

04|
おはなし:村上彰さん(岩手県和賀郡 20代)

我が家では、小さい頃に何か悪いことをすると「そどさぶだして、ふぐろうさつれでってもらうぞ!(外に出して梟に連れて行ってもらうぞ)」とよく祖父母におどかされたものです。市内とはいえ、町場から離れた我が家はすぐ裏手が山。家の畑にはなんだかわからない動物の足跡があったり、庭先で蛇が日向ぼっこ、野生の動物がすぐご近所で生活しているような場所なので本物のふくろうは見たことはなくても、子どもながらに夜中にぐりっと丸い目を光らせているあの大きくて恐ろしい鳥を思い出しては怖さなのか不気味さなのかよくわからないものに震えておりました。
可愛げのあった子ども時代を過ぎ、二十歳を前にした頃。突然ふっと思い出したことがあるのですが、今日はそれをお話ししようと思います。いくらかあやふやな部分があるのは幼少期の思い出ということでご勘弁ください。
おそらく私がまだ小学校に上がる前のこと、その日も家族を相手に駄々をこねて(おもちゃ、お菓子を買ってもらえなかったとか)怒られてしまい、いつものごとく「ふくろうさ」という話が出てきました。しかし、本当に外に出される訳があるまい、とたかをくくった私はわがままを突き通そうとします(お恥ずかしい)。いつもは優しい祖父もこの時はお酒を飲んでいたか何かで大変怒り、本当に玄関先に出されてしまいました。先に言ったように山が近く、夜になると外灯も少ないので外は真っ暗。それまでの元気はどこへ行ったのか一変して今度は家に入れてくれるよう祖父に頼みますが、なかなか聞き入れてもらえません。
不思議なものでそういうときに限って祖父母から聞いていたふくろうの話を思い出してしまうんです。ふっと庭の方を見ると一番高い庭木の上に光る目が…。「ふくろうだ! ふくろうに連れて行かれる!」とこわくなった私は泣きながら玄関を叩きますがなかなか許してもらえません。もう一度庭を見るとさっきよりもふくろうが近づいてきています。ぎゃんぎゃん泣きながら謝りその後なんとか家に入れてもらい、という話をそれなりに大きくなってから思い出したのですが、我が家に本当にふくろうが来ていたのか、それともそれまで聞いていた話から幼い自分が怖い思い出を作り上げてしまったのか、はたまた怒られた夜に見た夢なのか。真相を知りたいと思いつつも、このままにしておいた方が夢があるようなちいさな頃の不思議な思い出話でした。

05|
おはなし:番場三雄さん(山形県上山市 60代)
聞き書き:古田和子

50年以上前のことです。
私が小学生のとき、私の家では使わなくなっただんだん畑を利用して杉の木を植林していました。
だんだん畑は傾斜していたため、杉の木は天にまっすぐ伸びるようにと水平方向にぐいっと紐でひっぱられていて、そのために、木の根元はやわらかいカーブを描くような形をしていました。
そのだんだん畑にできた杉林の中に、根元にうろのあるものがありました。
そのうろの中である日、キジバトが卵を産んでいました。小ぶりで、青グレーのきれいな卵でした。一緒にみつけた兄は優しくその卵を見つめていました。
ある日、学校帰りに卵を覗きにいくと、1つ数が足りないことに気がつきました。どうやら、近所に住む子どもがもっていってしまったとのことでした。それをきいた兄は、家に帰り、自分のお小遣いを貯めていた貯金箱の中身を取り出して、卵を持っていってしまった子どもの家へといきました。
「その卵、俺に売ってくれ」
子どもは、お金と引き換えに卵を返してくれました。
うちは、その村の中でもとても貧しい家でしたし、お小遣いも家で育てた野菜を自分で売って稼いだ大切なお金でした。
でも、そんなことよりも、兄にとっては卵が杉の木のうろの中にある巣にあることが大事だったのです。
いま考えると、持ち帰った時点で、その卵の命はもう絶えていたでしょうし、無駄なことだったともいえるかもしれません。でも私には無駄なことではなかったように思えます。

06|
おはなし:古田和子さん(山形県山形市 30代)
聞き書き 髙橋かおる

私は山の上の一軒家に住んでいます。山と言っても街からはそれほど遠くはなく、自然が身近に感じられる静かなところです。この家にはかつて、恩師の奥様の友人が住んでいました。その方は現在、隣に建てた新しい家に住んでいます。「家族との思い出がたくさん詰まった大切な家が、傷んでしまわないように誰かいい人に住んでもらえないかしら」と先生が相談を受けて、私に声がかかりました。
とても広いこの家には、四季折々の花が咲く庭があり、キュウイの木が家に絡まっています。甘い匂いに誘われてなのか、時折、ムカデやゲジゲジ、ナメクジ、ヤスデ、クモといった虫たちが家の中にニョコニョコと入ってきます。虫の嫌いな私にとって、この来客は困りものです。夜になると天井裏からネズミやハクビシンの足音が聞こえてきます。この居候たちも困りものです。街の中とは違い、夜の山は真っ暗でシーンと静まりかえっているので、五感が冴えわたります。「夜中に耳を澄ますとフクロウの鳴き声が聞こえてくるんですよ。あの声を聞くと不思議と落ち着きます。朝はカッコウの声で目を覚ますんです」山ではどんなに苦手であっても、野生動物や虫たちと付き合っていかなければなりません。中でも声で存在を知らせてくれる鳥たちは、季節の移り変わりや時間の経過といった日常の変化を知らせてくれる大切な存在です。

07|
おはなし:男性(山形県中山町 80代)
聞き書き 高橋美香

今では禁止されているが、ヤマガラを捕まえて飼った。トリモチやかすみ網をよく利用した。トリモチの場合、罠にかかってからすぐ捕まえないと、粘着力が強いため羽根が痛んでしまうのでタイミング勝負だった。捕まえたら丸くて細長いかごを作り、ズサの実を入れておく。かごで餌を食べる、かごの中で宙返りを自由にするようになると環境に慣れたシグナルなので、そうなると家の中に放したり、手乗りを教えるなどして遊んだ。
何度か飼った一匹が、寒かろうとかまどの上に吊るしていたら煙のせいで死んでしまった。

08|
おはなし:金井萌英(山形県山形市 20代)
聞き書き:古田和子

私は、あるときから山をふらふら歩くことを始めました。
もともと千葉県で生まれ育った私にとって、山形を知ることの手立てが、直感的に山にあるように思ったからです。
そこで、うさぎやリス、カモシカなどの動物に遭遇しましたが、一番惹かれたのはアオバトでした。
そこから、アオバトのことを調べてみたり、保護活動をしている団体と関わる機会を持ちました。
アオバトと自分との関わりの中で、感動した光景が2つあります。
ひとつは、海に海水に含まれるミネラルを求めて、飛び込む姿。
彼らは命を失う覚悟で海に飛び込みます。それは、生きるためにミネラルを摂取する必要があるためです。宮城の石巻の海でもそんなアオバトがみることができたのですが、震災後につくられた高い高い防波堤が彼らを生きづらくしています。そんな環境でもアオバトは海に入り続けます。生きるために。
もうひとつは、おそらくつがいであろう2羽のアオバトが寄り添いながら空を飛ぶ姿です。
私はその姿に安心感を覚えます。そして、とても素敵だなと思うのです。人の夫婦を見ているよりも、そう思います。そして、未来を想像したくなります。先ほどお話したように、彼らは生きるためなら、死ぬことも覚悟しています。そんな彼らが、恋をして、その場限りの恋なんてものはなくて、未来をつくるために彼らは、1羽の異性と恋をします。私にもいつか、そういう人と出会いたいです。
アオバトは、私にさまざまな人を引き合わせ、いろいろな土地に導いてくれました。
大げさかもしれませんが、彼らは私の世界を広げてくれました。

09|
おはなし:玉手京子さん(宮城県仙台市 90代)
聞き書き 玉手りか

 昔は仙台でも、街からちょっと離れれば、フクロウやムササビ、キツツキもいたよ。今では道路ができて、川も埋め立てられて生き物の種類も減ったけど。そういえば最近は、ガマやカタツムリなんかもあまり見なくなったね。 
私たち家族がここへ越してきた45年くらい前、このあたりは開発途中の住宅街で、庭にモグラが住んでいたり、家の前をキジの親子が歩いていたね。キジはもう全く見なくなったけど、今でもウグイスやハト、シジュウカラは庭に遊びに来るよ。
ずいぶん前のことだけど、ゴミ置き場でカラスがゴミを散らかして大変だった。道路の半分くらいまでゴミを広げて。いつもゴミのなかに食べ物はないかと目を光らせているの。あるときそこに餌を探しにトンビが来たんだね、そしたら見張っていたカラスが怒って襲いかかったの。するとトンビは「ピーヒョロヒョロ」と鳴きながら空高く逃げて行ったの。トンビの方が強いと思っていたけど、餌を狙っているカラスがトンビより強いということが、そのとき分かったよ。

10|
おはなし:安達奈緒子さん(山形県山形市 30代)
聞き書き:玉手りか

近所にある瀧山川では、子ども時代よく遊んでいた。雨が降らなければ遊べるような穏やかな川だ。
最近のことで、今年の5月、飲み会の帰り道のこと。13号線の雑貨屋さんのあるあたりを歩いているとき何気なく橋の下を見ると、暗闇の中に白いものがぼうっと浮かんで来た。シラサギかな、と思って見ていると、不意にバチッと目が合ったという感覚があった。そのまま立ち去ったけれど、ほんの数秒だったはずなのに長い時間に感じられた。
お酒が入って膨張した空間の中、ハッとするものに出会った不思議な夜だった。

11|
おはなし:菅野勲さん(山形県大蔵村肘折 60代)
聞き書き:鈴木淑子

鳥は、撃ちたいけどなかなか猟場がないのよ。人家から300メートル以上、離れないといけない。前は、ダムにけっこういたのが今、いねぇんだ。小松渕から下にいるけどよ、撃っても拾うことができねぇ。川さ落として、何回か流してやった。
鳥でいうとヤマドリ。ヤマドリが、うまいのよ。鴨よりうまい。ヤマドリは秋はいるけど、雪降るとみんな、いなくなるんだ。下ってしまって。たまに出くわしてもなかなか獲れない。ヤマドリは、メスはすぐわかる。ヤマドリほど、オスメスがすぐわかるって動物、他にない。
ここの沢入ったとこ、ヤマドリが歩いてったのよ。ちょこちょこちょこって。こっちの手前から、向こう側のヤマドリ撃ったのよ。あれ、飛んでるとなかなか当たんないけど、歩いてたとこだったから撃ったのよ。それを撃って拾いに行くのに、降りてから登って回って行かねぇといけねぇ。拾いに行って反対側見たら、自分が撃った木の下さ、ウサギがちょこんといたのよ。だから、ウサギの頭の上から撃ったのよ。ああいう時はおもしろかったな。普通はよ、ウサギは撃てば逃げてくはずが逃げないでそこにいるんだ。10年前の話だ。春だ。3月頃かな。

12|「おおきなつばさ」
おはなし:菊池大二郎さん(山形県山形市 40代)
聞き書き:高橋美香

鳥はしょっちゅう見るけれど、今までで一番感動的だったのがフクロウ。
冬、よくその辺の里山に登る。登って、帰りはソリで降りてくる遊びがお気に入り。ジップフィーというソリで、スキーやスノーボードに追いつけるくらい速いし、体重移動で簡単にコントロールできて、スクートより簡単。
その日も、男友達とふたりでわーきゃー言いながら楽しく滑っていた。
滑っていく先に、大きな木のウロがある倒木が見えた。その木の脇を通るときに、そこからフクロウがブワッと出て来た。上から出て来たんじゃないかな。かなり大きくて神秘的だった。そしてど迫力。フクロウって夜行性なんで日中見ることはないし、そもそもなかなか見たことはなかった。翼を広げたフクロウをあんなに間近で見たことが感動的だった。
滑り降りた後も、ずいぶん興奮が抜けなかった。

13|
おはなし:伊藤利彦さん(山形県山形市 60代)
聞き書き:庄司亮一

オオタカは絶滅危惧種になっていますが、最近は増え過ぎていて、気をつけて見ると街の中にも結構いるんですよ。飛び方はトンビと少し違うのでわかります。
2年前でしょうか、うちの養鶏場で鶏が小屋の中で集まって圧死していたことがありました。始めは何故そんなことが起こったのかわかりませんでしたが、それはオオタカが原因だったのです。
まだ狩りを知らない子供のオオタカだったんでしょう、お母さんから離れて目の前においしそうなそうな鶏を見つけた。鶏小屋には金網がしてあったんですが、そのオオタカの子は金網が見えないわけではなくて、金網というものが何なのか分からないんでしょうね。目の前のご馳走めがけて金網に激突したのです。しかも、学習能力がないというか、タカもダメージを受けるのですが、何度も何度も飛んでは金網にぶち当たりを繰り返してしまう。それが一週間ぐらい続きました。逃げ場のない小屋の中の鶏はパニックを起こしまって、ぎゅうぎゅうに集まって圧死してしまったというわけです。合計30羽ぐらいやられましたね。
それが分かって、鶏小屋の前に生肉を入れた罠を仕掛けておいて捕獲しました。タカは大きなけがはしておらず離れた場所で放しました。それからは来なくなりました。

14|「鳥の数が減っているはなし」
おはなし:菅野守さん(山形県山形市 70代)
聞き書き:安達奈緒子

猟ではね、撃ちにくいのは鳩だな。
あと、山鳥とかキジとかも撃つよ。
最近トリの数、キジの数なんか特に少なくなってんのはな、タヌキが悪いんだ。鳥の卵全部食っちゃうから。カモでもなんでも卵全部食べちゃう。
トリってな、地面に卵産むのよ。キジは12個まで産んで温めんだ。これは昔っから12個って聞いたな。山鳥は6~7個。木のふもとのな、間みたいなへこみに産むんだよ。トリがそういうへこみをちゃんと見つけんだ。そこの地面の中深くに産むんだよ。桜田山になんか沢山あるよ。でも、とにかくタヌキがそれを見つけて食っちゃうんだ。テンとかも卵食べるし。ヘビも卵食うからな。タヌキ食べる動物もいないし人間も獲らねからな。だからトリの数増えねんだ。

15|
おはなし:荒川由衣さん(山形県山形市 30代)
聞き書き:是恒さくら

昔住んでいた戸沢村は、人口5千人くらいの村だった。面積は広いけれど、ほぼ森林という地域だった。山には、入り口ぐらいまでしか遊びに行ったことがなかった。山は怖い、というイメージがあってあまり入らなかった。親からは、「底なし沼があるから気をつけろ」とも言われていた。
家の庭に桜の木があった。幼稚園ぐらいの頃、その根元のところに弱った鳥が落ちていた。かわいそうだったので家に持ち帰って、ちり紙で布団をつくって寝かせてあげた。けれど次の日になったら死んでいた。家の隣の畑の隅に埋めた。
家で飼っていた亀のお墓もその辺りにあった。その亀は、動かなくなったので埋めたけど、今思えば、冬眠していただけだったのかもしれない。かわいそうなことをした。
鳥のお墓には「ピーコの墓」とかアイスの棒に書いて、亀の隣に埋めた。

16|「キジとヤマドリ『ケンケンとゴドゴド』」
おはなし:伊藤房明さん(山形県山形市土坂 60代)
聞き書き:荒川由衣

この辺で鳥と言うどキジどがヤマドリだべな。 キジだどこの辺さいるんだ、畑の周りどがりゃ、そういうどごが多いな、明るいどご。ヤマドリだど山だげど。キジは雄と雌で見た目がたいぶ違うけどヤマドリは雄と雌であんまり変わらねんだ。雌キジみたいのがヤマドリ。キジはケンケンって鳴ぐべ、ヤマドリは鳴がねんだ。ゴドゴドゴド、ゴドゴドゴド、っていう羽ばたきするんだ。羽根ば擦るんだっていうな。ゴドゴドゴド、ゴドゴドゴド、ってすっとあーヤマドリいだなって分がる。雨降りんどき林道をずーっと歩いてるとヤマドリが歩いでるとこ見たことある。露あっとぎは藪の中歩ぐど濡れでしまうからだべな。猟期んどぎはみつけたら撃つよ。でも弾つめだりなんかさんなねがらすぐは撃てないからそれまで逃げでいがねげばな。歩いてるときは弾込めででダメだがらりゃ。たいがい飛ぶげどな、人いぐど。獲物いだら自動銃に3発弾装填して、ボーンって撃つ。腕前はあんまりいぐねなぁ! 1発で仕留めねどヤマドリなんかは林の中さ入っていぐど分がんねぐなるべ。キジだと畑で周りに何もないがら3発くらい撃でるげど。獲った後は大根とかごぼうとか白菜とか入れてキジ汁ヤマドリ汁にして食べる。食い物(餌)が違うんだがヤマドリの方がんまいみでだな。畑に出るキジは大根の葉っぱどが食べてヤマドリはどんぐりとか木の実食べてるから。

17|
おはなし:加藤まり恵さん(愛知県知多市 20代)

秋の終り、何もかもに息詰まったあたしは一人旅をした。
行く先は北の方。
目的はない。北へ北へ。
ただそれだけだった。
あたしは車を走らせた。
歌詞のわからない洋楽がBGM。缶コーヒー飲みながら。
ただ、ただ北へ。北へ北へ。
携帯は電源消してサヨウナラ。
祝福してくれる眩しい太陽と清々しい空色。
窓を開けるとあたしの髪が踊る。踊る踊る。
旅の始まりだ。
北へ進むと山が見えた。
大きな山も小高い丘も。
林を通り抜ける、湖が見える。田んぼや畑。コンニチハ。
海が恋しいな。ふっと思う。
生まれ故郷は海の近く。
6年も離れた故郷に来年は帰るのかー。
随分海を見てないな。
目的地は海。
あたしは車を走らせた。
小さな町を抜けると防波堤が見えた。
少し離れた場所には灯台。
車を止め。防波堤を登る。
風が強かった。日差しも眩しかった。
海なんて随分見ていなかった。
海の色ってこんな色だったか。
灯台の周りにはたくさんのとりたち。
防波堤にもたくさんのとりたち。
真っ白なとり。
走りたくなった。
どこかの漫画の主人公のように。
灯台へ向かって。
防波堤の上を走る。走る走る。
ぶわーーーーーーーーーーーっと飛び立つ。空を舞う紙吹雪。
歓迎かな?
違うね。
あなたたちは祝福なんかしてくれない。
真っ白なとりたちはいう
「明日には帰るんだよ、君は邪魔なんだ。」
あのきらきらと輝く海。
空を舞う紙吹雪。
「帰ったら今やるべきことをやろう。」
ここはあなたたちの居場所。
ここはあたしの居場所じゃない。
そうやってとりたちが世界を見つめるから、あたしもそうやって見たくなった。
空から見渡せば色んなものが見えるよね。
でも空からじゃなくても良いのかもね。
大好きな曲をかけてあたしは帰る。帰る帰る。
「おかえりなさい。」
「ただいま。」
ちょうど1年前の海と空ととりたちの情景を思い出した。

18|
おはなし:佐藤祐貴子さん(20代)

鳥たちと触れた事は何度かあるが、シジュウカラの子育てを見たことがある。鉢植えを逆さにすると、巣をつくるとは聞いていたが、私が見つけたのはひつじの形の焼き物の、顔が割れて中が空になったところだった。シジュウカラの子が3羽いた。高校生だった私は初めてひなを手にとった。あかるいところに出されたヒナはびっくりして飛ぼうとしていた。かわいそうになりひつじの中に戻すと親鳥が帰ってきており、とても怒っていた。

19|「テストの乱入者」
おはなし:斎藤優希さん(山形県山形市 20代)
聞き書き:半澤青空

中学2年生とき、数学のテスト中にスズメが6羽くらい教室にいきなり入って来ちゃったの。テストだったから静かだったけどびっくりして皆騒ぎ出した。最初は天井をぐるぐる回ってて、そしてそのうちの1羽が廊下に飛び出して、天井にある時計に、ぶつかって気絶しちゃった。それで、テスト中だったけど先生がホウキとチリトリ持って、きゃーきゃー騒ぎながら廊下に行ったの。教室から見える先生の様子が面白くて皆で笑ってたら、先生が気絶したスズメをチリトリで取って逃がしたの。他のスズメは天井ぐるぐる回った後に窓から逃げてった。スズメが入ってきて一旦テストが中断になったから、3分の延長してもらってその後は皆落ち着いてテストしたよ。
学校中テストしてたのに私のクラスだけ騒いでたから、帰りに隣のクラスの子に何してたの? って聞かれたんだ。

20|「キジのメスは撃っちゃだめ!」
奥山義則さん(山形県山形市 60代)
聞き書き:玉手りか

狩猟の対象である「狩猟鳥獣」は人間の都合で変わる。環境省あたりでときどき変更がある。害獣として有名なハクビシンも十何年前までは狩猟鳥獣ではなかった。それが、数が増えたり作物に被害があるからといって狩猟鳥獣になった。ムクドリもそう。雑食で、サクランボやイチゴに被害が増えたら狩猟鳥獣になった。鳥獣が狩猟獣になるかならないかは人の勝手だ。
俺が狩猟を始めたときから40年前からだめだったのが、キジの雌。人間の世界でも野生動物の世界でも、女の人は大切にされているね。狩猟免許取るときも、影絵で鳥獣判別ってあるの。雄はいいけど雌はだめっていうのがあるから、出た瞬間に判断して撃てるように。
子孫を繁栄するという意味では雌。男もいないとだめだけどね。自然界の人口的にも女性は多い。カモだってだいたい卵を12個ぐらい生むけど、やっぱり雌が多いんだね。犬も8匹子犬を生んだら雄は2、3匹であとは雌だもの。子孫を残すために、雌の方が多く生まれてくるんだね。

21|「金魚どろぼう」
おはなし:浅野友理子さん(山形県山形市 20代)
聞き書き:古田和子

あれは、何年前かの夏だったかな。うちの実家の庭にちっちゃい池があるんだけど、うちのじいちゃんとばあちゃんがそこでペリカンをみたっていうんだよね。私とか、父とか母は、いや、それはないでしょうっていったんだけど。
家に大きめのこたつがあって、こたつから窓を見ると、ちょうど池が見えるの。池はね、そんな大っきくない。2mくらいかな。その中に金魚が10匹とフナが数匹いるの。
で、じいちゃんとばあちゃん、並んで座ってたら、気がついたときにはそこにバサッバサッてデカめの白いペリカンがその池で水浴びをしてたって。
ペリカンは日本にいないでしょって家族でいったんだけど。
それで、翌日、池を見てみたら金魚がいなくなったんだよね。
なんかね、どうやら、じいちゃんばあちゃんがみたペリカンって、金魚を丸呑みしすぎて喉が膨らんだシロサギだったみたいなんだよ。うちの実家のあるとこって田園地帯があって、シロサギがよくいるのね。それで、田んぼの中にいるタナゴとかをたべてるんだけど、そいつがうちに来たみたい。
なんでだろうね。田んぼが減ったからか、エサがなくなっちゃったからか、よくわからないけど、うちの金魚を食べに来たみたい。じいちゃんとばあちゃん、シロサギが去ってくまで見てたみたい。そんな長い時間のことではなかったみたいだけど、驚いている間に全てが起きて、終わったって。怒りとかの感情が生まれる前に。
いま池にはネットが張ってあるんだ。

どうぶつにまつわるエピソードを聞かせてください ミロコマチコより